見知らぬ乗客

名古屋案件の最終日、今日もこだまグリーン車でゆったり向かうはずだった。
席に座ると隣に座ってくる輩がいる。しかも、くたびれたスーツにペタついた髪型、ノートPCやテザリング用とその他用の2台のスマホやらで店を広げ始めて、絵に描いたようなITソルジャーだった。
一心不乱に提案資料を作り始めて、所属法人名もあなたの職歴(転職含む)もまる分かりな状態。おおかた三島か静岡あたりで降りるかと思えば、豊橋を過ぎてもそのまま座っている。俺らの横のツーシーターなんて品川からここまで誰も座っていないのに、なぜこのシートは満員が続いているのか。おそらく通路を歩く人は、俺のことを部下が必死に書類を作る脇で爆睡する極悪非道な上司と思っているだろう。

そして名古屋が近付き降車準備を始めるが隣人は全くその気配が無い。いよいよ減速したので通路に出ようとすると、大慌てでテーブルを上げて俺を通そうとする。まだ乗るんかーい、である。

社内を見渡すと席は半分も埋まっていなかった。なんだったんだ、一体。