その街の今は / 柴崎友香

最初に知ったのはテレビドラマ版。2年前の今頃、日曜日のどんよりした午後に大阪の自室で偶然、途中だけ見た。淡々としたストーリーと静かな音響、屋外ロケで映る大阪の街並にしばらく見とれてしまい、我に返って買物に出かけた記憶がある。
その時のもの静かなドラマの雰囲気がずっと記憶に残っていて検索してみたところ原作の存在を知り、そして舞台が船場近辺ということでかなり興味を持っていた。先日機会があって読むことができた。
ストーリーはテレビドラマに輪をかけたように静かに進み、日常のちょっとしたやりとりや風景が書かれていく。出てくる地名がいちいちツボで、自分が見ていた街の景色を思い浮かべながらそれを文章中の丁寧な描写で確認していくという得がたい経験をすることができた。小説自体も自分が普段読まないテイストのもので不思議な読後感だった。
残念なのは俺の時はソニータワーがZARAに変わってしまっていたことかな。