火花 / 又吉直樹

通勤の車中と仕事の空き時間で読んでしまった。自分には、文学の体裁をまとった(漫才という形式の)笑いの表現論のように読めた。つまり、又吉直樹という人は笑いというものをこういう風に考えているのだな、と読み取ってしまった。もし、作者の人となりを知らないまま読んでいたらどう感じていただろうとも思うが、それはもうわからない。
山下洋輔が自身の著書でメタ的な視点からのジャズ論を書くことがあり、凄く面白いのと同時に表現行為ってなんだろう、と考えたくなるのだが、この本ではそういったことを2人の主人公プラスアルファを使って書いているように感じた。理屈っぽくなりそうな話題を、登場人物の感情の動きに託して叙述するあたりが文学的なのかもしれない。
芸談系のテキストはみんな好き、という程度の雑な人間でも面白く読めた。

ドラマ的な視点で再構築(映像化)したり、それぞれの脇役に想像をたくましくしたり、といろいろな楽しみ方ができる話になっていると思う。全然違うはずなのに、神谷の相方の大林はテンダラーの浜本をイメージしてしまった。